「地域みらい留学365」を利用して、香川県高松市から能登高校にやってきた高砂信章さん。ママチャリでの衝撃の登場から早一年、めくるめく能登高留学生活にも締めくくりの日が近づいてきました。
1年間の能登高校での学校生活や、能登町でのくらしを振り返ってもらいました。
フレンドリーなのは僕じゃなくて
あっという間の1年でしたね。
今日は能登高留学を通じて高砂くんの心に残ったことをいろいろ聞かせてもらえたらと思います。
高松の高校から能登高校に来て、最初にびっくりしたことは何でしたか?
最初にびっくりしたことでもあるし、1年通してもいちばんだと思うのは、上下関係がないところです。先輩と後輩の関係もそうだし、先生と生徒の距離も近くて和気あいあいとしているところ。
高松の高校では先輩には絶対敬語だし、先生と勉強や学校生活以外の話をすることはほとんどありませんでした。それが能登高校では学年関係なくみんな友達っていう感じでタメ口で話すし、先生とも冗談を言い合ったりする。最初は距離感わからなくて戸惑ったけど、今は能登高校の親しさが好きです。
4月に来てすぐのときもクラスメイトに囲まれて笑ってる様子が印象的だったけど、もともと積極的に友達作るのは得意なほう?
いや、人見知りだし自分からグイグイ友達作りにいくのは全然です…。相手から来てくれるときは話せるんですけど。
5月に取材に来てくれた記者さんにも「フレンドリーでもう能登高校になじんでるね」って言われたんですけど、フレンドリーなのは僕じゃなくて、能登高のみんななんだと思います。いろいろ話しかけてきてくれて、そのおかげで僕も打ち解けることができました。
「能登高校は学年関係なく話せる」ということは、1年生や3年生の友達もできましたか?
気が合ってよくしゃべりに行っていたのは3年生地域産業科のクラスでした。
能登に来たとき、県外からの移動だったのでコロナ感染防止のために他のみんなと分かれて寮生活していた期間があったんですけど、そのとき同じく県外の帰省先から寮に戻ってきた3年生のN先輩が寮のことや高校のこといろいろ教えてくれて、すごく頼りになって。
そのあとしばらくNさんとは寮で会ったときにあいさつする程度だったんですけど、僕が同じクラスでいつも一緒にいた友達とケンカして…そのときにNさんと寮でまた話すようになって、学校でもNさんのいる3年生地域産業科のクラスにしゃべりに行くようになって、ほかの3年生とも話すようになりました。
他の学年のクラスに気軽に話しに行けるのは、確かに和気あいあいとしていますね。ところでそのケンカした同級生とは仲直りしたの!?
しました(笑)。大丈夫です。そいつと仲直りしたあとも3年生のクラスにもよく行きました。
寮では毎日が修学旅行みたいだった
寮生活はどうでしたか?家族と暮らすのとは違うルールもいろいろあると思いますが。
寮、楽しいです!ルールはいろいろあるほうだとは思います。たとえば、スマホは夜7時半までに寮の事務室に預けないといけないとか。
スマホ預けるのは平気でしたか?いつも会うとスマホ握りしめてた気がするんだけど(笑)
慣れれば平気になりました(笑)。スマホ預けたあとも、マンガ読んだり、友達の部屋に行ってしゃべったりするんで。
友達の部屋に遊びに行ったりもするんですね。部屋は1人部屋ですか?
はい、男子は1人1部屋です。仲いい友達の部屋になんとなく行ってみたり、声が聞こえたら混ざってみたり。あ、他の人の部屋に入るときはマスク外さないっていうルールもあります。
寮で人が多く集まるのは風呂場と食堂くらいですね。談話室もあるけどテレビ見る部屋っていう感じなので、しゃべったりするなら各自の部屋に行きます。
寮に帰ってきてからの時間の使い方は決まってますか?
能登高校から寮までは寮バスが出てて、寮に帰るのは「5時バス」と「7時バス」の2本あります。
どっちのバスで帰るかでちょっと変わるんですけど、たとえば部活なくて5時バスで寮に帰ったら、夜7時55分から「学習時間」になるので、それまでに夕食と風呂を終わらせる感じです。
点呼が夜10時、そのあと消灯するか、「勉強延長申請」を出していたらそのあとも起きて勉強することもあります。
点呼っていうのは、先生が見回りに来るんですか?
はい、先生来ます。消灯前の点呼のほかに、学習時間にも見回りに来ます。だから、友達の部屋にいるときはその時間にダッシュで部屋に戻ったりとか…自分の部屋にいても、先生のスリッパの足音が聞こえたらビシっとしたりとか。なんか、毎日が修学旅行の夜みたいでした。
寮の舎監は能登高校の先生が交代でするので、怖い先生のときは、めっちゃスリルあります。
スリル(笑) 怒られたりすることはありませんでしたか?
罰当番で反省文と掃除をしたことがあります。
そのときはどんなことがあったんですか?
ルール違反の大きい小さいにかかわらず罰当番になるので。僕がやったのは、登校前に部屋のコンセントの抜き忘れたのが2回でした。
缶詰に込めたかったお父さんの味
高砂くんが「地域みらい留学365」で能登高校を選ぶきっかけになった、海や水産の勉強はどうでしたか?
水産コースで「ローカルフィッシュカングランプリ」(※高校生が地域の魚を活用した缶詰で競う全国大会)に挑戦する機会がありました。2年生はトビウオ(アゴ)をテーマにすることになって、僕のチームはトビウオをつみれ汁にしようと考えました。
つみれ汁にしたのは、釣り好きな父が家で作ってくれた味をイメージしたからです。僕はつみれのパサパサした感じが嫌いだったので、モチモチの弾力がある感触にしたら若い人や子どもも好きなんじゃないかなとか、魚の臭みが出ないようにショウガを入れよう、能登の魚醤「いしり」を使いたい、とかをクラスメイトと相談しながら試作しました。
そして高砂くんたちが開発したつみれ汁「アゴダゴ汁」が石川県代表に選ばれて、缶詰商品化されたんですよね。
はい。でも、思いどおりの味にすることや、コストや加工のことを考えながら缶詰として商品にしていくのは難しいんだなということも学びました。
缶詰製造会社さんと連絡を取り合って何度か希望を伝えたり調整してもらったりしたのですが、父の味を再現するところまではたどりつけず、心残りです。
能登高留学を検討していたとき、高砂くんも元の学校の先生も、3年生で戻ったときに勉強面で困らないかというのを心配していたと思いますが、そこはどうでしたか?
正直、高松にいたときよりしっかり勉強できてると思います。
そうなんだね!どうしてしっかりがんばれてるんだと思いますか?
高松での1年生のときは、高校入試で燃え尽きて気力がなくなってたというか、寝てばっかりで…低迷したまま固まっていた感じでした。でも能登高では水産の実習が楽しくて、そのおかげで他の教科の授業も含めて勉強全体のやる気が出ました。
あと、能登高に来たときに「進学校の奴が来るらしいぞ」「頭いいらしいぞ」っていう話になっていて。ヤバイ、悪い成績は取れない!ちゃんと勉強しないと!っていうのもいいプレッシャーになりました(笑)。
高校生活に続いて、次回は能登町の地域の人たちとのかかわりについても聞いていきます。
(能登での日々:地域とのつながり編につづく)
取材・文/能丸恵理子